101・慢性疲労—冷たいもの飲みすぎ症候群—

101・慢性疲労

—冷たいもの飲みすぎ症候群—


 数ヶ月も風邪が治らない、体がだるい、微熱が続くなどの症状を訴える患者さんが最近目に付くようになりました。内科で検査をしても異常がないとのこと。このような症状が半年以上も続くと慢性疲労症候群というようです。

 この患者さんでまず確認すべきことは、生活環境、労働環境、食生活など身近な問題です。明らかなストレスや過労などの原因がはっきりしない場合は、食事やクーラーなどで身体を冷やし過ぎていないか注目してみましょう。

 冷たい水をコップ一杯飲んだところで、健康な成人には問題は起こりません、ところが繰り返し飲み続けると害が現れます。身体は冷えると必ず熱を発生し、これに対応します。冷たい物をとり続けると上部消化管に、いわゆる内熱を発生させ、口が渇き、さらに冷たい物を欲しがるという悪循環を生じるのです。冷たい飲み物では汗をかかないので、皮膚にも熱がこもり、暑く感じてクーラーを強くすることになります。すると体温維持のために相当のエネルギーを消費することになり、それで身体がだるく、やる気が起こらない状態になると考えられます。この場合の微熱は冷えに対して体温を維持しようとするための反応で、検査では何の異常もでません、ただ軽い風邪症状が続くだけです。

 このような症状の成り立ちがわかれば、まず注意すべきなのは冷たい飲み物でお腹を冷やすのをやめること、そしてゆっくり温かいお風呂に入り、必要な汗をかくように温まることです。そうすればクーラーを弱くセットできます。その上で漢方薬を服用すれば早く回復します。

 疲労感が強く食欲がない場合に補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や人参湯(にんじんとう)。微熱と軽い咳が続き、唇が乾いて寝汗をかく場合には柴胡桂枝干姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、冷えが強く咳がひどい場合には甘草乾姜薑湯(かんぞうかんきょうとう)や茯苓四逆加人参湯(ぶくりょうしぎゃくかにんじんとう)で身体を十分温める必要があります。

 最近の生活様式、環境の変化に伴い、訳の分からない病気が増えているようです。少量とれば害がないと思われている冷たい飲み物でも長期間続けると体調を損なうところに盲点があるようで、いわば“冷たいもの飲みすぎ症候群”です。

 このように身近な生活条件が微妙に生体に変化を及ぼし、体調を崩すと考える漢方的な病気の考え方は今後ますます重要になるでしょう。(2000年8月3日初出)