口唇乾燥症

口唇乾燥症

(平成20年3月7日)


  口唇乾燥症とは唇が乾燥する病気である。

  小さい頃寒い冬に唇が乾燥することがあり布団負けといわれた。また唇をなめると余計に悪くなるような印象もある。ひどい場合はひび割れて切れ出血することがあり痛々しい。ことに若い年頃の女の子であればなおさらである。

  唇は微妙な場所にある。口の中は常に唾液によってぬれているが、唇は常に外気に触れ乾燥している。唇は皮膚より表面の皮が薄く血管が透けて見えるので赤い色をしている。貧血のときは淡白になり、寒いときは血液のめぐりが悪く紫色になり、循環の状態をしめす情報を提供してくれる。唇の上皮は粘膜と皮膚の境目にあり、皮膚より薄く、粘膜より厚く、組織構造も皮膚と粘膜の中間の性質を持っている。これは唇が口腔粘膜や胃粘膜の状態を反映すると同時に皮膚の状態にも影響される微妙な組織であることを示している。

  さてなぜ唇が乾燥するのだろうか。体全体が脱水で乾燥すると口腔粘膜や舌も乾燥する。当然唇も乾燥する。外気の湿度が低いと当然唇も乾燥する。体が熱発すると熱により唇表面の水分が蒸発しやすいので乾燥しやすい。空気が乾燥するとデリケートな唇は乾燥しやすく、冬に悪化する理由がある。布団を頭からかぶると温まりすぎて乾燥すると思われる。

  微妙な唇の乾燥は風邪の治りかけのときに起こる。風邪が治りかけてきたが微熱や咳が残り、寝汗をかいて何となく本調子でないときに唇が乾燥するということが、風邪の漢方処方の選択の目安になっている。実際には口紅ののりが悪いことで唇の乾燥を確認する。

  そのほかには口内炎があるときに唇が乾燥するようである。口内炎は口腔粘膜の炎症で、漢方的には胃熱すなわち胃に内熱があるときに起こり、時には乾燥した唇にもアフタができて痛い。口内炎は過労、ストレス、睡眠不足で内熱が出るときに起こるようである。内熱とは体温計では熱がないのに体や口の中が火照るような感じをさしており、漢方の専門用語では胃の虚熱という。

  生活関連で起こる内熱は冷たいものの摂りすぎである。冷たいものを摂りすぎて胃を冷やすと冷えた胃は温まろうと熱を発生する。すると口腔粘膜に内熱が及んで口内炎を起こし、ついでに唇も乾燥してくる。熱を持つので冷たい飲み物でつい冷やしたくなるのが人情であるが、逆にそれが更に内熱を発生させ、口内炎や唇の乾燥を悪化させて治らないという悪循環を起こすようである。口唇乾燥が何年も続くという深刻な状態もある。唇を氷で冷やしたり、冷たい水を飲んだり、アイスクリームを食べたり、炭酸を飲んだりすべて悪化する原因になる。

  漢方的には胃の内熱は虚熱であるから潤いを与えて熱を冷ますような処方を使う。また保湿作用のある軟膏を併用すると更に効果的である。でも一番大事なことは生活を整えることである。十分な睡眠と休養、ストレスを避け、冷たいものを摂り過ぎないことである。